東京シティ・フィルの創立50周年記念特別演奏会の第2弾。高関健の指揮でマーラーの交響曲第2番「復活」。結論から先に言えば、初々しい感性のあふれる演奏だった。話が少し遠回りになるが、高関健はプログラムに掲載したエッセイの中で、次のように書いてい…
原田慶太楼の東響正指揮者としての最後の定期演奏会。1曲目はコープランドの「アメリカの古い歌(第1集)」。わたしはこの曲は独唱者(声部はさまざまだ)が歌う曲だと思っていたが、当夜は混声合唱が歌った。そういう版もあるのかと。 アメリカの古き良き時…
「ペンツベルクの夜」はドイツの児童文学だ。作者はキルステン・ボイエ。1950年ハンブルク生まれの女性作家だ。「ペンツベルクの夜」を書いたのは2020年。本作品で2022年のドイツ児童文学賞を受賞した。 ペンツベルクはミュンヘンから南へ50キロほど離れた町…
ヒル「最後の人類」(WIKIMEDIA COMMONSより) 前回は「スウェーデン絵画」展でとくに惹かれた作品について書いたが、前回触れることはできなかったが、惹かれる作品があるので、今回はそれについて書きたい。 前回書いた作品は、いわばメインストリームの画…
東京都美術館で「スウェーデン絵画」展が開催中だ。フランスでもイタリアでもドイツでもなく、スウェーデンという点が新鮮だ。 スウェーデンの画家たちは19世紀の中ごろからフランスで絵を学び、スウェーデンに帰国してからは、スウェーデンの自然や文化に目…
下野竜也が振る日本フィルの東京定期。一見地味なプログラムだが、聴いてみると、思いがけない手ごたえがあった。 1曲目はサミー・ムーサ(1984‐)の「エリジウム」。未知の作曲家なので、事前にインターネットで調べてみた。サミー・ムーサはカナダ生まれの…
映画「死の天使 ヨーゼフ・メンゲル」が劇場公開中だ。メンゲレは第二次世界大戦中にアウシュヴィッツ強制収容所で人体実験を繰り返した医師だ。ドイツの敗戦後、しばらくはドイツ国内に潜伏したが、1949年にアルゼンチンに逃亡し、以後、パラグアイ、ブラジ…
鈴木優人が読響を振ってバッハの「マタイ受難曲」のメンデルスゾーン版(1841年)を演奏した。メンデルスゾーンが「マタイ受難曲」を蘇演したのは1829年だが、この版は1841年に演奏したときの版だ。1829年にはカットされた曲が何曲か復元されているという。 …
森美術館で開催中の「六本木クロッシング2025」展は3年に一度の現代アートの展覧会だ。わたしは最近現代アートがおもしろくなった。同時代に生きる人々が何を感じ、また何に苦しんでいるか。それが分かるからだ。本展には21人(または組)の作品が展示されて…
先日、新国立劇場オペラストゥディオ(オペラ研修所)公演でオットー・ニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」を観るので、予習のつもりでシェイクスピアの原作(↑)を読んだ。読み始めてから、以前読んだことがあるかもしれないという気がしたが、きれい…
新国立劇場オペラストゥディオ(オペラ研修所)公演でオットー・ニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」。序曲は名曲コンサートの定番だが、オペラ上演は稀だ。貴重な機会なので観に行った。 原作はシェイクスピアの同名戯曲だ。同じ戯曲からヴェルディの…
蔦哲一朗監督の映画「黒の牛」を観た。1月22日の東京新聞に監督のインタビュー記事が載り、「主に35ミリの白黒フィルムで撮影し、一部に70ミリのカラーフィルムを使った」とあった。白黒フィルムを使った点に興味を惹かれた。 ストーリーは時も所も定かでは…
N響の定期演奏会Cプロ。指揮はハンガリー出身のゲルゲイ・マダラシュ。実演を聴くのは初めてだが、以前にストリーミングでフランクの作品を聴いたことがある。オーケストラはフランクの出身地のリエージュ・フィルだった。安定感のある良い演奏だったので、…
東京シティ・フィルが創立50周年記念特別演奏会を企画した。昨日は第1弾。曲目はマーラーの交響曲第6番「悲劇的」。第2弾が3月31日に予定されている。曲目はマーラーの交響曲第2番「復活」。指揮はともに高関健だ。 東京シティ・フィルの本拠地は東京オペラ…
フィリップ・ジョルダンが初めてN響を振った。1曲目はシューマンの交響曲第3番「ライン」。第1楽章が始まる。時折クラリネットやトランペットの細かい音型が突出する。だが概して端正でスタイリッシュな造形だ。それはそれでよいのだが、途中から詰まらなさ…
読響の今月の定期演奏会は、内容が二転三転した。まず曲目だ。当初予定された望月京の新作ヴァイオリン協奏曲(2月6日追記:新作ヴァイオリン協奏曲→ヴァイオリンとオーケストラのための新作に訂正します。申し訳ありません)が間に合わず、細川俊夫のヴァイ…
国立西洋美術館の常設展ではいま注目すべき展示が二つ行われている。一つはクリムトの「アッター湖の島」(↑)だ。クリムトの作品が同美術館のコレクションに初めて入った。クリムト・ファンには朗報だ。 「アッター湖の島」はウィーンのレオポルド美術館の…
日本橋高島屋で「闇市と都市」展が開かれている。敗戦直後の闇市とはどんなところだったか。わたしたちは分かっているようで分かっていない。たとえば闇市は自然発生的に生まれた違法地帯というイメージがあるが、実際には営業許可証が発行されていた。本展…
ソヒエフ指揮N響のCプロ。ソヒエフはAプロのマーラーの交響曲第6番でN響の能力を極限まで引きだした。ではCプロはどうか。結論から先に言うと、N響の通常運転に戻ったようだ。プログラムは前半がフランス音楽、後半がロシア音楽だった。ソヒエフでなければ組…
ヴァイグレ指揮読響がプフィッツナーの「ドイツ精神について」を演奏した。2023年のアイスラーの「ドイツ交響曲」に引き続き、ヴァイグレならではの選曲だ。アイスラーのブレヒトの詩にもとづく反ファシズム(反ナチ)の「ドイツ交響曲」と、プフィッツナー…
トゥガン・ソヒエフ指揮N響のAプロ。曲目はマーラーの交響曲第6番「悲劇的」。例の問題を先に言っておくと、中間楽章は第2楽章アンダンテ・モデラート、第3楽章スケルツォの順番だった。また第4楽章のハンマーは2回だった。 ともかく大変な名演だ。N響が全力…
広上淳一指揮日本フィルの東京定期演奏会。1曲目はファジル・サイ(1970‐)のチェロ協奏曲「Never Give Up」。ファジル・サイは著名なピアニストだが、作曲もするらしい。山野雄大氏のプログラム・ノートによると、「既に120を超えるその作品には、6つの交響…
ハンガリーの映画監督タル・ベーラが1月6日に亡くなった。「長期にわたる闘病の末に」亡くなったと報じられている(各メディア)。享年70。わたしよりも若かったのかと‥。もっと年上だと思っていた。 わたしは映画をあまり観ないが、タル・ベーラの「ニーチ…
2026年はウェーバー(1786‐1826)の没後200年だ。ウェーバーはオペラ「魔弾の射手」で有名だが、反面、「魔弾の射手」が有名すぎて、他の作品は影が薄い。そこでこの機会にストリーミングでいろいろ聴いてみた。 もっとも感銘を受けた作品はクラリネット協奏…
前回のブログにも書いたが、原武史の「象徴天皇の実像――「昭和天皇拝謁記」を読む」(岩波新書、2024年)は、初代宮内庁長官だった田島道治が昭和天皇の語ったことを記録した「昭和天皇拝謁記」を読み解く本だ。素人が「昭和天皇拝謁記」を読み通すことは難…
2025年は戦後80年、そして昭和100年だった。節目の年に読む本として、原武史の「象徴天皇の実像――「昭和天皇拝謁記」を読む」(岩波新書、2024年刊)を読んだ。感想を書いておきたい。 わたしは戦後生まれなので、戦前の昭和天皇を知らないが、戦後の昭和天…
2025年が終わる。今年はどんな年だったろう。音楽で得たものは何だったろう。そう考えてまず頭に浮かぶのは、細川俊夫の新作オペラ「ナターシャ」だ。わたしは初日を観てブログを書いた。だが、なぜか未消化の感覚が残る。一年の終わりに当たって、もう一度…
アンサンブル・ノマドが定期演奏会でヴィクトル・ウルマン(1898‐1944)の室内オペラ「アトランティスの皇帝」を上演した。ウルマンはチェコ生まれのユダヤ人だ。シェーンベルクに作曲を師事した。1942年にテレジン(当時はドイツ語名でテレージエンシュタッ…
東京オペラシティのB→Cシリーズ。實川風(じつかわ・かおる)のピアノ・リサイタル。バッハとイタリア音楽との関わりに焦点を当てたプログラムだ。實川風は2015年ロン・ティボー国際コンクール第3位(1位なし)・最優秀現代曲賞を受賞。すでに何枚かのCDを出…
「焼肉ドラゴン」の千秋楽に行った。胸が熱くなった。行って良かったと思う。「焼肉ドラゴン」を観るのは2度目だ。最初は2011年の再演のときに観た。そのときも舞台に渦巻く熱気と笑いと涙に感動した。今回も同じだ。 情けないことに、ストーリーはほとんど…