2020-01-01から1年間の記事一覧
チェコの作家・劇作家のカレル・チャペック(1890‐1938)は、戯曲「白い病」(1937)を書いた後に、戯曲「母」(1938)を書いた。それが最後の作品になった。わたしは「白い病」を読んで、まるでいまの新型コロナウイルスのパンデミックを先取りしたようなプ…
チェコの作家・劇作家のカレル・チャペック(1890‐1938)の戯曲「白い病」(1937)が2020年9月に岩波文庫から出た。チャペックの戯曲はいくつか読んだことがあり、どれもおもしろかったが、「白い病」は読んでなかったので、この機会に読んでみた。 どんな話…
新型コロナウイルスの感染拡大第3波のなかで2020年の年末を迎えた。巷には多くの困難を抱えた人々がいる。支援をする方々には頭が下がる。だが、支援にも限界があるだろう。また支援につながらない人々も多いだろう。そんな先の見えない状況だが、とりあえず…
日本フィルの横浜定期では毎年12月に「第九」が演奏されるが、今年の「第九」はコロナ禍の「第九」として、一生忘れられないものになりそうだ。 合唱は(例年通り)東京音楽大学の合唱団が起用されたが、例年と異なるのは、今年は総 勢48人だったことだ。例…
先日(12月15日)保屋野美和のピアノ・リサイタルを聴いて、ロシア・アヴァンギャルドの音楽に注目したので、CDをいくつか聴いてみた。 ロシア・アヴァンギャルドとは1917年のロシア革命の前後(具体的には革命前夜の1900年代からスターリン体制が強まる1930…
東京オペラシティのB→Cシリーズに保屋野美和(ほやの・みわ)というピアニストが登場し、じつに興味深いプログラムを組んだ。まず前半はバッハの「パルティータ第6番」と、それに触発された高橋悠治の「アフロアジア的バッハ」を数曲ずつ交互に弾くというも…
ダレル・アンはシンガポール生まれの指揮者。2007年の第50回ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝した。ちなみに2009年の第51回コンクールでは山田和樹が優勝している。ダレル・アンの日本フィルデビューは2019年3月の横浜定期で、そのときはラヴェルの「ダ…
読響のホームページによると、セバスティアン・ヴァイグレは11月中旬に来日し、2週間の自己隔離をへて、今回の定期に臨んだそうだ。今後は年末年始を日本ですごして、1月の各種コンサートを振る予定。通算すると約2か月間の日本滞在となる。いくつかの条件が…
わたしが愛読しているブログに「クラシックおっかけ日記」(※)がある。数カ月前にそのブログでアダム・フィッシャー指揮デンマーク室内管のベートーヴェンの交響曲全集のCDが紹介された。そのCDはドイツの音楽賞「オープス・クラシック(OPUS KLASSIK)2020…
日本フィルの11月の横浜定期は、当初はインキネンが振る予定だったが、来日できなかったので、川瀬賢太郎が代役に立った。プログラムも一部変更になり、オール・ベートーヴェン・プロになった。その選曲がわたし好みの曲ばかりで、ひじょうに楽しみなプログ…
オペラ「アルマゲドンの夢」は初日を観て、その感想を書いたが、最終日も観たので、いくつか補足的な感想を書いておきたい。このオペラが世界に通用するオペラであることは、初日に感じたとおりだが、もうひとつ感じたことは、歌手、オーケストラ、演出その…
バロックからコンテンポラリーまで自在に往き来する鈴木優人の面目躍如たるプログラム。1曲目はシャリーノ(1947‐)の「夜の自画像」(1982)。いかにもシャリーノらしい濃密な夜の曲だ。打楽器奏者がスチールプレート(文字通りスチール製の大きな板)を2本…
目黒区美術館で「LIFE コロナ禍を生きる私たちの命と暮らし」展が開かれている。同館の所蔵作品を「コロナ禍を生きる‥」の視点で構成したもの。そこに古茂田守介(こもだ もりすけ)(1918‐1960)の作品が5点展示されている。たいへん感銘を受けたので、二度…
藤倉大の新作オペラ「アルマゲドンの夢」。現代社会の問題(当オペラの場合はポピュリズムの政治家とその政党の台頭)をテーマにするオペラが東京で初めて誕生したという思いが強い。細川俊夫が東日本大震災をテーマにしたオペラ(そのテーマは原発事故では…
東京シティ・フィルはコロナ禍以前に組んだプログラムを着実にこなしている。その姿が頼もしい。10月定期は高関健の指揮でウィーン・プログラム。ウィーンといっても観光地のウィーンではなく、そこに住んだ作曲家たちの濃い人生が展開されたウィーンだ。 オ…
本年2月以降のコロナ禍の推移で特徴的なことは、カミュの小説「ペスト」が象徴するように、文学、美術、歴史、その他のさまざまな分野の知見が動員され、いま起きていることの意味が論じられたことだ。わたしはそれらの知見にふれながら、では音楽はどうなの…
N響の元首席オーボエ奏者、茂木大輔の「交響録 N響で出会った名指揮者たち」(音楽之友社)。著者が1990年にN響に入団し、2019年に定年退職するまでに出会った名指揮者たちの思い出を書いたもの。サヴァリッシュ、シュタイン、ブロムシュテット、デユトワ、…
上原彩子のオール・シューマン・プログラムを聴きに行った。曲目は「パピヨン」、「クライスレリアーナ」、「謝肉祭」の3曲。上原彩子というとチャイコフスキーをはじめとするロシア物のイメージが強いが、そんな上原がシューマンをどう弾くかと興味がつのっ…
「スパイの妻」は、昭和15年(1940年)、戦火の迫る神戸が舞台だ。福原聡子は貿易商を営む福原優作と幸せな毎日を送っている。優作は満州に出張する。そこで関東軍の機密にふれる。優作はその機密が人道上許せず、(国内は軍国主義一色なので)アメリカで公…
映画「異端の鳥」をみた。時は第二次世界大戦中、所は東欧のどこか(特定されていない)。ナチス・ドイツのユダヤ人狩りが迫るなか、ある少年が老婆のもとに預けられる。ところが老婆が急死する。少年は逃げ出す。戦争、暴力、性的虐待など、あらゆる辛酸を…
H.G.ウェルズ(1866‐1946)の「世界最終戦争の夢」(1901)を読んだ。11月15日から新国立劇場で上演予定の藤倉大の新作オペラ「アルマゲドンの夢」の原作だからだ。同劇場のホームページによると、スタッフ・キャストの外国勢はすでに入国して、リハーサルに…
日本フィルの横浜定期は、辻彩奈(つじ・あやな)をソリストに迎えて、新味のあるプログラムを組んだ。先にプログラムをいうと、演奏会前半はバッハの「シャコンヌ」、ヴァイオリン協奏曲第1番と第2番、後半はブラームスの交響曲第4番。指揮は角田鋼亮(つの…
沼尻竜典が東京シティ・フィルの定期を振るのはこれが初めてらしい。ちょっと意外な気がするが、それもなにかの巡り合わせだろう。ともかく沼尻竜典が東京シティ・フィルをどう振るか、東京シティ・フィルがそれに応えてどんな演奏をするか、そんな興味のわ…
新国立劇場で「リチャード二世」が上演中だ。2009年の「ヘンリー六世」に始まるシェイクスピアの歴史劇シリーズの最終演目。上演順は「ヘンリー六世」三部作、「リチャード三世」(2012年)、「ヘンリー四世」二部作(2016年)、「ヘンリー五世」(2018年)…
アーティゾン美術館がパウル・クレー(1879‐1940)の作品24点を新規収蔵して、現在公開中だ。いかにもクレーらしい作品が入っている。以下、何点かご紹介したい。画像は下記のリンク先を参照願いたい(※)。 「ストロベリーハウスの建築工事」(1921)は(ク…
読響のサントリー音楽賞受賞記念コンサートだが、コロナ禍のために、まず曲目がメシアンの「我らの主イエス・キリストの変容」から同「峡谷から星たちへ…」に変わり、次に指揮者がカンブルランから鈴木優人に変わった。だが、そういう変遷を微塵も感じさせな…
新国立劇場が7カ月余りの休止期間をへてオペラ公演にこぎつけた。演目はブリテンの「夏の夜の夢」。オーケストラ編成が小さいので、オケピットは密にならない利点があるが、一方、児童合唱が入るので、(リハーサルでもステージでも)密にならない配慮が必要…
東京オペラシティのB→C(バッハからコンテンポラリーへ)シリーズに北村朋幹(きたむら・ともき)が登場して、プリペアド・ピアノ、トイピアノ、普通のピアノ、チェンバロの4種類を弾き分けるプログラムを組んだ。 プリペアド・ピアノはピアノの弦に「大小の…
高関健指揮の東京シティ・フィルの定期。高関健がプレトークでいっていたが、「2月の飯守泰次郎先生の定期のとき以来の、日にちもプログラムも変更のない定期」。なるほど、そういわれてみると、たしかにそうだ。10月以降はそうもいかず、すでに11月はプログ…
国立西洋美術館で開催されている「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」に行ったことは前回書いたが、同展に行った理由の一つは、同美術館の常設展で展示されている2019年度新規収蔵作品のフランシスコ・デ・スルバラン(1598‐1664)の「聖ドミニクス」(16…